e-文書法とは?対象文書・保存要件・電子帳簿保存法との関係や違いを解説!

e-文書法とは?対象文書・保存要件・電子帳簿保存法との関係や違いを解説!

文書を電子化して保存・管理すれば、必要なときに必要な文書を簡単に活用できる。

しかし、電子保存にあたって対応しなければならない「e-文書法」とは?

そんな疑問を持つ企業担当者に向け、e-文書法とはなにか?対象文書や保存要件、電子帳簿保存法との関係・違いなどを含め、わかりやすく解説していきます。

目次
  1. 1. e-文書法とは?
    1. 1-1. e-文書法と電子帳簿保存法の関係
  2. 2. e-文書法の対象文書 / 施行規則
    1. 2-1. e-文書法が適用されない文書
  3. 3. e-文書法の保存要件
    1. 3-1. 見読性
    2. 3-2. 完全性
    3. 3-3. 検索性
    4. 3-4. 機密性
  4. 4. e-文書法と電子帳簿保存法の違い
    1. 4-1. 電子帳簿保存法の対象文書
    2. 4-2. 電子帳簿保存法の保存要件
  5. 5. 文書を電子保存するメリット
  6. 6. e-文書法対応ソリューションとは
    1. 6-1. Adobe Reader DC
    2. 6-2. MyQuick
  7. 7. e-文書法とはなにかを紹介しました

e-文書法とは?

e-文書法とは、民間事業者等に紙文書での保存が義務付けられていた「法定保存文書」に関し、電子データによる保存を容認した法律のこと。

正式には、2005年4月に施行された、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律。
および、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律、2つの法律を通称したものが「e-文書法」です。

e-文書法の施行によって、法定保存文書のほとんどが電子保存できるようになりました。民間事業者の利便性を向上させ、ペーパーレスを促進するための法律が、e-文書法なのだといえるでしょう。

ペーパーレスのメリット・デメリットについては以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:ペーパーレスとは|メリット・デメリット・取り組みの意義・推進のポイントを解説!

e-文書法と電子帳簿保存法の関係

それでは、e-文書法と関連した法律として知られる「電子帳簿保存法」とはなんでしょう?電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿・書類の電子保存を容認する、1998年7月に施行された法律のこと。e-文書法が国税関係文書を含む「法定保存文書」全般を対象とするのに対し、国税関係文書のみを対象とするのが電子帳簿保存法の特徴です。

e-文書法と電子帳簿保存法の関係

画像出典:リコー

法律の施行時期を見てもわかるように、もともと法定保存文書の電子保存は、国税関係文書(電子帳簿保存法)から開始されました。しかし、要件が厳格であったこと、紙文書のスキャナ保存が認められていなかったことなどで、あまり利用されているとはいえない状況だったことも事実。

こうした課題を解決し、対象を国税関係文書を含む法定保存文書全般にまで拡張した法律が「e-文書法」です。
e-文書法では、電子文書の電子保存に加え、紙文書のスキャナ保存も容認されているため、国税関係文書のスキャナ保存も実現しました。これが「電子帳簿保存法スキャナ保存制度」です。

電子帳簿保存法スキャナ保存については以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:電子帳簿保存法のスキャナ保存制度|対象書類・要件・導入しやすくなった法改正のポイントを解説!

e-文書法の対象文書 / 施行規則

上述したように、e-文書法の対象は「法定保存文書」全般です。ただし、法定保存文書自体が民法、商法、銀行法、保険業法、学校教育法など、約250の法律で規定されているため、施行規則を発行する省庁もさまざま。

以下に、代表的なe-文書法の対象文書を挙げておきましょう。

医療関係文書

電子カルテ、紙カルテのスキャナ保存など

厚生労働省

建築図書

設計図書など

国土交通省

会社関係文書

定款、取締役会・株主総会議事録など

法務省

e-文書法が適用されない文書

e-文書法によって、法定保存文書のほとんどを電子保存できるようになりましたが、一部の例外も存在します。

たとえば、以下のような文書は紙文書での保存・管理が求められます。

  • 船舶の手引書など、緊急時にすぐ読める必要のある文書
  • 一部の不動産関係文書など、法律で紙による保存が求められる文書
  • 免許証 / 許可証など、きわめて現物性の高い書面・文書

e-文書法の保存要件

要件の種類

内容

見読性

保存した電子文書を直ちに「見れる」「読める」状態にしておく

完全性

ある時点で対象となる電子文書がたしかに存在していたことを証明する

検索性

文書を速やかに取り出せるよう、電子文書の体系的に保存・管理する

機密性

電子文書の漏洩、盗難、盗み見などを防ぐため、不正アクセス対策を行う

対象となる法定保存文書を電子保存する場合、e-文書法で求められる要件を満たす必要があります。ただし、施行規則を発行する省庁がさまざまなように、e-文書法で求められる要件も文書によってさまざま

原則として「見読性」「完全性」「検索性」「機密性」を満たす必要がありますが、文書によっては満たす必要のない要件もあります。

見読性

見読性とは、保存した電子文書を直ちに「見れる」「読める」状態にしておくことを求めたe-文書要件。具体的には、電子文書をコンピューターディスプレイに表示できること、あるいはプリントアウトして見れること。さらに、表示・プリントアウトした電子文書の内容を読める状態にしておくことが求められています。

紙文書をスキャナ保存する場合も、同様の見読性が求められます。具体的には、表示・プリントアウトした文書の見読性を確保するのに充分な解像度で、紙文書をスキャンしなければなりません。

完全性

完全性とは、ある時点で対象となる電子文書がたしかに存在していたことの「証明」を求めたe-文書要件のこと。具体的には、保存された電子文書の消去・破損・改ざんを防止する対策を講じること、改ざんがあった場合の検証が可能な状態にすることが求められます。

これは、消去・編集・改変が容易にできてしまう電子文書の性質があるからです。

e-文書法の完全性要件を満たすには、以下のような方法があります。

  • 文書の作成日や編集・修正・改変など、履歴・ログが残るシステムで電子保存する
  • 保存時に電子文書を変更できないシステムを利用する
  • 電子文書にタイムスタンプ / 電子署名を付与する

完全性を担保するタイムスタンプ / 電子署名とは

なかでも、紙文書のスキャン保存を中心に、電子文書で幅広く利用されている方法が「タイムスタンプ」「電子署名」です。

タイムスタンプとは、電子文書に時刻情報を刻印することで、それ以前に電子文書が存在していたこと、現在までに改ざんされていないことを証明する技術のこと。これを「存在時刻の証明」「非改ざん証明」といいます。

一方の電子署名とは、電子文書に本人が署名していること、改ざんされていないことを証明する技術のこと。これを「本人証明(真正性)」「非改ざん証明」といいます。

たとえば、契約書のように当事者であることを証明(本人性)する必要のある文書は、タイムスタンプと電子署名を組み合わせて完全性を証明します。本人性の証明が不要な文書、領収書などを電子保存する場合は、タイムスタンプのみでかまいません。

タイムスタンプについては以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:タイムスタンプとは?役割・仕組み・利用目的・対象となる書類・利用方法を解説!

検索性

検索性とは、目的の文書を速やかに取り出せるよう、電子文書の体系的な保存・管理を求めたe-文書要件のこと。具体的には、検索機能などで目的の電子文書を簡単に取り出せるシステムで、電子保存・管理する必要があります。

機密性

機密性とは、電子文書の漏洩、盗難、盗み見などを防止するため、権限のない第三者による不正アクセス対策を求めたe-文書要件のこと。具体的には、電子文書を保存するシステムへのアクセス権限設定、パスワードによる管理など、一般的なセキュリティ対策を施す必要があります。

e-文書法と電子帳簿保存法の違い

e-文書法が施行されたことによって、電子帳簿保存法にスキャナ保存制度が加わったことはすでに解説した通り。このことからも、e-文書法の適用範囲は電子帳簿保存法の適用範囲を含んでいることがわかります。

ただし、適用範囲が重なるとはいえ、e-文書法と電子帳簿保存法は異なる法律。その違いを簡単に整理しておきましょう。

電子帳簿保存法の対象文書

e-文書法の対象文書は、国税関係書類を含む「すべての法定保存文書」であるのに対し、電子帳簿保存法の対象種類は「国税関係帳簿・書類・電子取引」に限定されます。

電子帳簿保存法の対象となる具体的な文書は以下の通り。

 

文書例

国税関係帳簿

仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、賃借対照表、損益計算書など

国税関係書類

契約書、見積書、請求書、領収書など

電子取引

インターネット取引、メール取引などの取引情報

電子帳簿保存法の保存要件

e-文書法の対象書類でも、施行規則を発行する省庁によって「要件が異なる」ことはすでに解説しました。同じように、国税庁が施行規則を発行する電子帳簿保存法の対象書類は、国税庁によって要件が定められています。

ただし、e-文書法の原則要件と大きく変わるわけではありません。電子帳簿保存法の要件は大きく「真実性(完全性)」「可視性(見読性)」「検索性」の3つ。それぞれの要件は、文書の種類によって細かく規定されていることが特徴です。

文書を電子保存するメリット

e-文書法が施行されたことによって、法定保存文書のほとんどが電子化できるようになり、多くの企業が文書の電子保存へ取り組んでいます。それは、文書を電子保存することによって大きなメリットが得られるからにほかなりません。

具体的なメリットは以下の通り。

  • 業務効率化・生産性向上
  • 紙の印刷コスト・保管コスト削減
  • 紛失・誤廃棄による情報漏洩リスク低減
  • テレワークを含む多様な働き方実現

e-文書法対応ソリューションとは

もちろん、紙文書の保管・管理から、電子文書への保管・管理へ移行するには、e-文書法の要件を満たすシステムを用意しなければなりません。それが「e-文書法対応ソリューション」です。

どのようなタイプの文書を電子化するかによりますが、一般的にはタイムスタンプを付与した上で文書管理システムで保存・管理する。あるいは、タイムスタンプの付与できる文書管理システムで保存・管理する場合がほとんど。タイムスタンプの付与できる文書管理システムなら、電子帳簿保存法スキャナ保存制度にも対応できます。

Adobe Reader DC

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画像出典:Adobe

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PDFへのタイムスタンプ付与については以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:PDFにタイムスタンプを付与する方法|概要・用途・電子帳簿保存法との関係も解説!

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画像出典:MyQuick

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e-文書法とはなにかを紹介しました

文書を電子化して保存・管理すれば、必要なときに必要な文書を簡単に活用できる。
しかし、電子保存にあたって対応しなければならない「e-文書法」とは?そんな企業担当者に向け、e-文書法とはなにか?対象文書や保存要件、電子帳簿保存法との関係・違いなどをわかりやすく解説してきました。

e-文書法は、法定保存文書を電子保存する際の要件を定めた法律です。ただし、文書ごとに満たさなければならない要件は異なり、そもそも法定保存文書でなければ要件を満たす必要もありません。どのような文書を電子保存したいのかを明確にし、適切なソリューションを選定することが肝心です。