広域イーサネットとは|専用線・VPNとの違いやメリットなどを解説

広域イーサネットとは|専用線・VPNとの違いやメリットなどを解説

]企業の拠点間をつなぐサービスとして広域イーサネットの導入を検討している人もいるでしょう。広域イーサネットの導入を進めるなら、他のネットワーク構築技術との違いやメリットなどを知ることが重要です。

本記事では、広域イーサネットの概要を解説します。自社の用途に合うか判断して、導入してみましょう。

目次
  1. 1. 広域イーサネットとは
    1. 1-1. 専用線との違い
    2. 1-2. インターネットVPNとの違い
    3. 1-3. IP-VPNとの違い
  2. 2. 広域イーサネットを利用するメリット
    1. 2-1. 拡張しやすい
    2. 2-2. 通信速度の安定性・信頼性に優れている
    3. 2-3. 設定の柔軟性が高い
  3. 3. 広域イーサネットのデメリット
    1. 3-1. 設定が複雑になりやすい
    2. 3-2. 通信回線に依存する
    3. 3-3. セキュリティリスクがある
  4. 4. 広域イーサネット【まとめ】

広域イーサネットとは

広域イーサネットとは、イーサネット技術を活用して複数の離れた場所にあるLANを接続する技術のことです。インターネットプロバイダーや通信事業者が提供する閉域網を使用してネットワークを構築します。

広域イーサネットの主な活用シーンは「本社と支社」「国内外の工場や研究所」「リモートワーク環境」「データセンター間」などが挙げられます。ただし、一般的に回線費用が高くなるケースが多く、小規模よりも大規模な事業者向けのサービスです。

専用線との違い

専用線とは、通信回線の一種であり、2拠点間を物理的につなげる専用の通信回線を指します。

専用線の特徴は、限られた利用者しかアクセスできない点です。不特定多数がアクセスする公衆回線と違って、利用者が限定されることから第三者の侵入が難しくなり、高いセキュリティを確保することが可能です。さらに、利用者が限られるため、通信速度を維持しやすくなります。

専用線を利用する際は、コストが高額になりやすいのがデメリットです。専用の物理回線を使って通信を行うため、インフラ整備や保守などの費用が必要です。加えて、設備が故障した場合、修理費用や時間がかかります。

インターネットVPNとの違い

インターネットVPNは、広域イーサネットと同様のWANサービスです。インターネット上にトンネリング・暗号化などの技術を用いて仮想ネットワーク環境を構築します。

広域イーサネットは通信事業者の閉域網を使うのに対して、インターネットVPNは誰もが利用できるオープンな回線(インターネット)を使用します。広域イーサネットよりも不正アクセスを受けるリスクが増加したり、回線の混雑状況に応じて通信速度が低下したりする可能性があります。

またイーサネットVPNは、自社でインターネットとVPN機器を用意して設定すれば、ネットワーク環境を構築可能です。広域イーサネットよりもコストを抑えやすくなります。

IP-VPNとの違い

IP-VPNは、通信事業者の閉域網を利用するVPN接続サービスです。IP-VPNはレイヤ3(L3)のVPNサービスですが、広域イーサネットはレイヤ2(L2)のVPNです。

IP-VPNのメリットは、設定が簡単な点です。IP-VPNは、ネットワーク機器の用意や設定などを通信事業者に任せられます。拠点数が多いほど、導入にかかる手間を軽減できます。

ただし、IP-VPNのプロトコルはIPに限定されますが、広域イーサネットは多様なルーティングプロトコルを設定できます。広域イーネットのほうがカスタマイズ性に優れています。

広域イーサネットを利用するメリット

広域イーサネットを利用するメリット

続いて、広域イーサネットを利用するメリットをみていきましょう。

拡張しやすい

広域イーサネットは、レイヤ2で通信を行うためネットワークの終端をL2スイッチでつなげられます。L3スイッチやルータなどを設置しなくても広域イーサネットに接続が可能です。離れた拠点間のLAN同士をつなげやすくなるため、新たな拠点を広域イーサネットに追加したい場合、容易に拡張できるようになります。

通信速度の安定性・信頼性に優れている

広域イーサネットは、通信事業者の閉域網を利用してネットワークを構築します。公衆回線と違って、回線の利用者が限られるため、遅延が少なく安定した通信が可能です。さらに、セキュアな通信もできることから、ネットワークの信頼性を高めやすくなります。

設定の柔軟性が高い

広域イーサネットは、レイヤ2で通信が行われるため、レイヤ3以上のプロトコルに制限がありません。RIP(Routing Information Protocol)やBGP(Border Gateway Protocol)など、様々なプロトコルを設定できます。そのため、自社の要望にあわせて、柔軟なネットワーク環境を構築可能です。

広域イーサネットのデメリット

広域イーサネットのデメリット

広域イーサネットはメリットだけでなく、デメリットもあります。デメリットも把握した上で、広域イーサネットの導入に取り組みましょう。

設定が複雑になりやすい

広域イーサネットは、ネットワーク設定を柔軟にできる反面、複雑化しやすくなります。ルーティング設定を通信事業者が対応しないため、自社の拠点側でネットワーク機器の設定をしなければなりません。広域イーサネットを導入する際は、ネットワーク設定をできる知識・スキルが必要です。

また、拠点数が多いほど設定に手間がかかるため、導入から運用までの負担が増加しやすくなります。

通信回線に依存する

広域イーサネットは、通信回線を利用して離れた拠点間で通信を行います。通信回線の稼働状況や障害などによって、拠点間の通信に影響を及ぼす可能性があります。さらに、回線の帯域幅に上限が定められている場合、通信速度が制限されることに注意しましょう。

セキュリティリスクがある

広域イーサネットは、地理的に離れているLAN同士をつないで1つのLANとしてネットワークを構築する技術です。通信事業者の閉域網を利用するとはいえ、インターネットを介して複数拠点で通信が行われます。不正アクセスや情報漏洩などのセキュリティリスクが発生する可能性があります。

広域イーサネットを導入する際は、セキュリティ対策も並行して検討しましょう。

広域イーサネット【まとめ】

広域イーサネットは離れた拠点間のLANを接続する技術です。拡張がしやすく、設定の柔軟性が高いことから、企業のネットワーク環境の構築に役立てられます。

ただし、広域イーサネットはメリットだけでなくデメリットもあります。総合的に判断した上で、広域イーサネットの導入に取り組んでみてください。