専用回線とは?仕組みやメリット、VPNとの違いなどを解説!
リモートワークの導入や安全な通信のためにネットワーク構築をしたく、専用回線が候補になっている企業の担当者へ。専用回線についてわからずお困りではありませんか?
本記事では、専用回線の仕組みやメリット、VPNとの違いなどを解説します。最適なネットワーク構築の方法がわかりますので参考にしてください。
専用回線とは?
専用回線(専用線)とは、拠点同士を接続する専用のネットワーク回線のことです。
機密情報を取り扱う金融機関や政府機関、大容量のデータのやり取りが必要になるシーンなどで利用されています。
専用回線は、安全性や安定性に優れている点が強みです。反対に、コストの高さや導入・保守の負担の大きさ、複数拠点では接続できない点がデメリットです。
専用回線のメリットデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
専用回線のメリット
セキュリティ性が高い
専用回線はセキュリティ性が高いというメリットがあります。
そもそも専用回線は物理的に隔離されているため、関係者以外アクセスが難しい仕組みだからです。
盗聴傍受や改ざんの危険性が低いため、機密情報を取り扱う場合にも適しています。
通信速度が安定している
専用回線は第三者の利用状況などに影響を受けることがなく、一定の通信速度を保つことができます。
専用回線の場合、不特定多数が利用する一般的な回線とは違い、自社だけで回線を利用します。そのため、契約した速度で常に通信ができるのです。
ライブ配信を行う場合など、安定性が求められるシーンでは専用回線が役立ちます。
大容量のデータをやり取りできる
自社だけで利用するという特徴から、大容量のデータを安定的にやり取りできるのもメリットです。
第三者の影響を受けることがないため、確実に通信ができます。
動画コンテンツやアプリケーションなど大容量のデータをやり取りしたい場合にも、専用回線が活用できます。
専用回線のデメリット
コストが高い
専用回線は、他の回線よりもコストが高くなるのがデメリットです。専用の回線を用意する分、費用は高い傾向にあります。
たとえばKDDIの専用線サービスで、通信速度1Gbpsの場合の月額料金は以下の通り。
距離区分 |
基本回線使用料 (税込) |
回線終端装置使用料 (税込) |
合計 (税込) |
~50km |
6,699,000円 |
66,000円 x 2拠点分 |
6,831,000円 |
~100km |
7,623,000円 |
66,000円 x 2拠点分 |
7,755,000円 |
~500km |
10,208,000円 |
66,000円 x 2拠点分 |
10,340,000円 |
参考元:KDDI「KDDI 国内イーサネット専用サービス 料金」
料金は拠点間の距離や契約する通信速度、通信容量に応じて変動します。また、上記に加えて回線工事にも費用がかかります。
導入や運用保守の負担が大きい
専用回線の導入には回線工事が必要になり、導入には手間がかかります。また、ネットワークの監視や運用、管理を行う必要があります。
社内でネットワークの担当者を用意して運用保守を行うことになり、手間やコストがかかります。
複数拠点では接続できない
専用回線は拠点間を1対1で通信を行うため、複数拠点とは接続ができません。
具体的には、本社と支社1、本社と支社2など1対1での接続は可能ですが、支社同士では専用回線での接続はできません。
1対1で複数の専用回線をつなぐことは、コスト的に現実的ではないでしょう。複数拠点での接続をしたい場合、このあと紹介するVPNの導入を検討するのがおすすめです。
VPNとは?
ネットワーク構築をする場合、専用回線の他に候補となるのが「VPN(Virtual Private Network)」です。専用回線とVPN、それぞれのメリットデメリットを比較して適切なネットワークを選ぶのが賢明でしょう。そのため、VPNについても説明します。
VPNの仕組み
VPNとは、仮想的な専用ネットワーク回線を構築するネットワークです。送受信の際にデータを暗号化し、セキュリティを確保した通信環境を低コストで実現できるのが特徴です。
専用回線は安全性や安定性を求める場合には有効ですが、コストが高いというデメリットがあります。専用回線のデメリットを解消しつつ、プライバシーを高めて情報を送り届ける仕組みがVPNです。
VPNの種類と特徴
VPNには主に以下の4種類があります。
- インターネットVPN
- エントリーVPN
- IP-VPN
- 広域イーサネット
インターネットVPN
インターネット回線を利用する方法です。コストの低さが魅力ですが、公衆ネットワークであるインターネットを使うという特性上、セキュリティが万全ではないというデメリットがあります。
エントリーVPN
ブロードバンド回線を利用し、専用の閉域IP網を利用する方法です。インターネットVPNほどではありませんが、比較的低コストです。また、インターネットVPNよりも通信環境が安定しています。
IP-VPN
通信事業者が独自に保有している閉域IP網を利用する方法です。セキュリティ性が高く、通信速度も安定しています。ただし、インターネットVPNやエントリーVPNと比べると高コストです。
広域イーサネット
通信事業者が保有している専用回線を利用する方法です。自由度が高い上、高セキュリティ・高速度ですが、費用は高額な傾向にあります。
▼関連記事
「VPNについて詳しく知りたい」と思った方は「【簡単】VPNとは?仕組みや種類を初心者向けにわかりやすく解説!」をあわせてご覧ください。
専用回線とVPNの比較
専用回線 |
VPN |
|
コスト |
高い |
低い |
セキュリティ |
高い |
専用回線と同程度の セキュリティを保つのは難しい |
パフォーマンス |
保証できる |
保証が難しい |
運用面での負担 |
高い |
低い |
可用性 |
非常に高い |
高い |
拡張性・柔軟性 |
低い |
高い |
複数拠点での接続 |
不可 |
可能 |
ここまで読んで「結局、専用回線とVPNどっちがいいの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。そうした方に向けて、専用回線とVPNを比較して説明します。
まずは上の表でざっくりイメージをつかんでいただいた上で、それぞれの項目を見ていきましょう。
コスト
コスト面は、専用回線よりもVPNのほうが低い傾向にあります。
専用回線は回線工事で初期費用がかかる上、専用で回線を用意するという点からコストは割高になりがちです。一方で、VPNは既存の回線を利用するためコストは低くなる傾向にあります。
セキュリティ
セキュリティ面では、専用回線・VPNともに一定レベルのセキュリティの高さが期待できます。しかし、専用回線ほどのセキュリティ性をVPNで実現するのは難しいでしょう。
専用回線は関係者以外アクセスができない仕組みのため、自ずとセキュリティは高くなります。VPNの場合、セキュリティレベルの高さは種類によっても異なり、広域イーサネットが最も高く、順にIP-VPN、エントリーVPN、インターネットVPNと続きます。
パフォーマンス
通信のパフォーマンスは、インターネットVPNと比べると、専用回線のほうが安定しています。
専用回線は契約している通信速度を保てるのが特徴です。VPNは使用する回線によって異なり、インターネットVPNの場合、他のユーザーの利用に影響を受けるため、一時的に通信速度が遅くなることがあります。
運用面での負担
運用面では、VPNのほうが負担は低いといえます。
専用回線の場合、ネットワークの監視や運用、管理を社内で行う必要があります。VPNの場合、VPNの提供業者に運用保守を任せられるので手間は減ります。
可用性
可用性とは、ネットワークを使用し続けられるかどうかを表す指標です。稼働率ともいいます。可用性は、専用回線のほうが高いといえるでしょう。
専用回線では予備の回線を用意することで、万が一のときにも稼働し続けられるよう、可用性を高めることが可能です。VPNの可用性は利用している回線に依存します。回線に異常が発生した場合、別ルートでの接続を行うように構築される場合が一般的です。そのため、ある程度の可用性を保つことができます。
拡張性・柔軟性
拡張性・柔軟性は、VPNのほうが高いといえます。
専用回線の場合、物理的な回線を使用するため拡張は難易度が高くなります。一方、VPNは既存の回線に仮想の専用回線をつくるという仕組みのため、拡張がしやすいという特徴があります。
複数拠点での接続
専用回線の場合、複数拠点での接続はできず1対1での接続のみ可能です。VPNでは、3か所を超える複数拠点で接続ができます。
そのため、複数拠点での接続をしたい場合は、VPNの導入が必要になります。
専用回線・VPNに向いているケース
最後に専用回線・VPNに向いているケースをそれぞれ紹介しますので、どちらを利用すべきか判断する際の参考にしてください。
専用回線に向いているケース
- 容量の大きなデータを安定的に送受信したい場合
- 金融機関や行政機関など、高いセキュリティ性能が必要な場合
- 警察や消防、電力会社など障害や誤作動などが許されない場合
専用回線は、安全性・安定性が高いという特徴から、高いセキュリティが求められる場合や容量のデータを安定的に送受信する必要がある場合。また、24時間365日の正常な稼働が欠かせない場合に向いています。
VPNに向いているケース
- 東京本社と大阪支社、福岡支社など複数拠点での接続が必要な場合
- 在宅勤務などでリモートアクセスが必要な場合
VPNは、複数拠点での接続が必要な場合や、セキュリティを高めつつも低コストでネットワークを構築したい場合に向いています。外部から社内データに安全にアクセスできるという点から、リモートアクセスが必要な場合にも重宝します。
また、導入する際には種類ごとの違いも意識して選ぶことが大切です。
▼関連記事
自社にはVPNが向いていると感じた方は「VPNの導入方法|種類・仕組み・必要な機器・手順を含むVPNの基本を解説!」をご覧ください。
【参考】専用回線とVPNの歴史
最後に参考情報として、専用回線とVPNが登場した背景を紹介します。
電話やインターネットなど不特定多数が利用できる公衆回線では、第三者からデータを盗み取られたり改ざんされてしまったりする恐れがありました。そこでセキュリティを高める手段として登場したのが専用回線です。
専用回線は高コストですが、本記事で紹介したようにセキュリティ面や安定性の面でメリットがあります。そのため、警察や消防、電力会社など稼働を止めることが許されない分野や機密情報を扱う大手企業などを中心に導入されています。
一方で、複数拠点での接続ができない、一般企業が使うにはコストがかかりすぎるなどのデメリットもあります。そうした背景から、2000年以降に低コストでプライバシーを高めて情報を送り届ける仕組みとして注目を集めたのがVPNです。
本記事で紹介したメリットデメリットを踏まえて、自社にはどちらが合っているのか検討することが大切でしょう。
専用回線の仕組みやVPNとの違いなどを紹介しました
専用回線の仕組みやメリットデメリット、VPNとの違いなどを解説しました。
専用回線は、コストはかかりますが、セキュリティ性の高さや安定性に強みがあります。VPNは、セキュリティ面は完全とはいえないものの、低コストで安全性の高い通信ができるメリットがあります。
自社がネットワーク構築を行う目的にあわせて、どちらが適しているか判断しましょう。