ペーパーレスとは|メリット・デメリット・取り組みの意義・推進のポイントを解説!

ペーパーレスとは|メリット・デメリット・取り組みの意義・推進のポイントを解説!

ペーパーレスを定着させることはそれほど簡単ではありません。メリットだけでなく、ペーパーレスのデメリットも把握した上で、適切な施策を推進していくことが肝心です。

そこで本記事では、ペーパーレスのメリット・デメリットから、取り組みの目的・意義・推進のポイントまでを網羅的に解説していきます。

目次
  1. 1. ペーパーレスとは
  2. 2. ペーパーレスのメリット
    1. 2-1. 業務効率化・生産性向上
    2. 2-2. 紙の印刷 / 保管コスト削減
    3. 2-3. 文書活用の利便性向上
    4. 2-4. 紛失・誤廃棄による情報流出リスク低減
    5. 2-5. テレワークを含む多様な働き方推進
    6. 2-6. CSR / SDGs実現
  3. 3. ペーパーレスのデメリット
    1. 3-1. 視認性・一覧性
    2. 3-2. メモを取る際に不便を感じる
    3. 3-3. 一定のITスキルが必要
    4. 3-4. 反対・抵抗勢力の影響で定着が進まない
    5. 3-5. 紙保存が義務付けられている書類の存在
  4. 4. ペーパーレス化の現状
    1. 4-1. ペーパーレスが進むほど生産性向上を実感
    2. 4-2. ペーパーレスの不安は「ITスキル」「セキュリティ」
  5. 5. ペーパーレスに取り組む目的・意義
    1. 5-1. DX実現に向けた最初の一歩
  6. 6. ペーパーレスを推進するポイント
    1. 6-1. トップダウンでペーパーレスを推進
    2. 6-2. ペーパーレスへの段階的な取り組み
    3. 6-3. 成果・事例を共有
    4. 6-4. ペーパーレス推進に有効なツールの導入
  7. 7. ペーパーレス推進で注意すべきセキュリティ
  8. 8. ペーパーレスのメリット・デメリット・推進ポイントを紹介しました

ペーパーレスとは

ペーパーレス(Paperless)とは、文字通り紙を使わないこと、紙をなくすこと。つまり、ビジネスにおけるペーパーレスとは、これまで業務で利用してきた紙を電子化し、データとして活用・保存することです。

たとえば、帳簿・領収書・契約書・請求書など、保存義務のある国税関係書類を電子データで保存する。会議に使用していた紙資料を電子化して活用する。タイムカードに記録していた勤怠情報を電子データで管理する。顧客向けのカタログ / パンフレットを電子化して営業に活用する。などがペーパーレスの代表例として挙げられるでしょう。

日本では、PCの普及が進んだ1990年代半ばから、ペーパーレスという概念は存在していましたが、技術的な問題もあってあまり浸透しませんでした。しかし、技術 / 法整備の進んだ2000年代から、ペーパーレスに取り組む企業が急増。2005年に約1200万トンだった「印刷・情報用紙」の国内需要は、2021年に約640万トンまで減少しています。

ペーパーレスとは

画像出典:日本製紙連合会

関連記事:電子帳簿保存法のスキャナ保存制度|対象書類・要件・導入しやすくなった法改正のポイントを解説!

ペーパーレスのメリット

ペーパーレスのメリット

ペーパーレスに取り組む企業が急増したのは、技術 / 法整備だけが理由ではありません。もともとペーパーレスには、取り組む価値のある大きなメリットがあったからです。具体的に挙げていきましょう。

業務効率化・生産性向上

ペーパーレスによって紙文書の「物理的」な管理が不要になるため、業務効率化・生産性向上を実現できます。

紙文書を管理するには、印刷・整理・分類・収納といった物理的な手間がかかります。文書を電子データ化してしまえば、こうした物理的な手間は不要。手間が省ければ業務効率化を実現でき、空いた時間をコア業務に割り振れば生産性向上を期待できるというわけです。

紙の印刷 / 保管コスト削減

印刷や物理的な保管場所を必要としないペーパーレスは、印刷コスト / 保管コストを削減できるメリットがあります。

特に、原則7年間の保存義務がある国税関係書類の場合、紙で保存する際の印刷コスト / 保管コストは無視できない金額です。電子データを活用するペーパーレスなら、こうしたコストを大幅に削減可能。物理的な作業も不要になるため、見えない人件費もカットできます。

また、物理的な保管場所が不要になることで、オフィススペースを有効に使えることもペーパーレスのメリットでしょう。保管場所が不要になれば、より小さなオフィスに移転し、経営をスリム化することも可能です。

文書活用の利便性向上

容易に管理できる電子データを活用したペーパーレスは、文書活用の利便性を飛躍的に高められるメリットがあります。

どんなに整理・分類されていても、紙文書を探すのには時間がかかります。管理ルールを守らない人がいれば、目的の文書が見つからないこともあるでしょう。

一方、検索性に優れる電子データなら、保管場所に移動せず、いつでもどこでも目的の文書を閲覧可能。営業にタブレットを活用すれば、かさばるカタログやパンフレットを持ち歩く必要もありません。

紛失・誤廃棄による情報流出リスク低減

ペーパーレスを推進することにより、紙文書の紛失・誤廃棄を原因とした情報漏洩リスクを低減できるメリットが得られます。

実は、情報漏洩・流出事故の原因として、人為的ミスは少なくありません。なかでも、重要書類の置き忘れ・紛失や、シュレッダーかけ忘れに代表される誤廃棄は、情報漏洩事故原因のベスト5に入ります。

物理的な書類を利用しないペーパーレスなら、そもそも紛失・誤廃棄は発生しません。電子データにもセキュリティリスクはありますが、システムのことであれば、ある程度コントロール可能です。

テレワークを含む多様な働き方推進

ペーパーレスによって、いつでもどこからでもデータを活用でき、物理的な場所に縛られない環境が整うため、テレワークを含む多様な働き方を推進できます。稟議の承認などにワークフローを活用すれば、遠隔地での勤務も可能。これは、優秀な人材の獲得が難しくなっている現代では非常に重要な要素です。

CSR / SDGs実現

CSR / SDGs実現に寄与するペーパーレスへの取り組みは、企業イメージの向上につながるメリットもあります。

CSR(Corporate Social Resposibility)とは、社会的な存在として企業が果たすべき責任のこと。SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な社会を目指す国際社会共通の目標です。

CSR / SDGsは、近代企業に強く求められる条件。紙の使用量を減らすペーパーレスは、森林保護、脱炭素につながるため、一般社会に環境保存に力を注ぐ企業というイメージを与えられます。

ペーパーレスのデメリット

ペーパーレスのデメリット

メリットの大きなペーパーレスですが、取り組んではみたものの成果を感じられない、思うように施策を推進できていないという企業も少なくありません。それは、ペーパーレスならではのデメリットを克服できていないことが大きな要因。

では、ペーパーレスのデメリットとはなにか?具体的に挙げていきましょう。

視認性・一覧性

よく挙げられるペーパーレスのデメリットは、紙文書よりも視認性・一覧性に劣る電子文書を使う必要があるということ。大きさに制限のあるPC  / タブレット画面では、文書の全体像を把握できない。紙文書のように、複数の資料をデスクに並べて閲覧できない、などがその理由です。しかし、これは本当にデメリットでしょうか?

文字通り、デスク代わりとして進化してきたデスクトップOSは、ユーザーの声を反映させながら、電子データの不便を解消する多彩な機能を追加しています。OSの機能を把握してPCを使いこなしていれば、デメリットを感じることは少ないはず。

むしろ、拡大・縮小が自在という点では、電子文書は紙文書よりも視認性に優れることも多いです。

メモを取る際に不便を感じる

紙文書と違って気軽にメモを取れない、不便を感じるというのも、よく挙げられるペーパーレスのデメリット。紙ならペンや鉛筆で素早くメモを取れる、PCでメモを取るにはアプリを起動してタイピングしなければならない、資料に直接メモできない、などがその理由です。

しかし、たとえば個人的にメモ帳を用意しておくことで解決は可能です。

一定のITスキルが必要

電子文書を記録・保存するために各種ITツールを必要とするペーパーレスは、利用者に一定以上のITスキルを求めるデメリットがある、ということもよくいわれます。たしかに、従業員のITリテラシーが不足していれば、ペーパーレス推進に向けた研修・教育コストがかかります。ツール導入コストを含め、ペーパーレスのデメリットに挙げる人もいるでしょう。

しかし、ITツール導入、従業員のITスキル向上が、業務効率・生産性向上につながることは確実です。むしろ、ITスキルを高めることでツール活用が定着すれば、導入効果を最大化可能です。

反対・抵抗勢力の影響で定着が進まない

こうしたデメリットを主張する「反対・抵抗勢力」の存在、および、その影響によって定着しない、活用されないことがペーパーレス最大のデメリットです。ペーパーレスに限らず、投資に見合った費用対効果を得られないのであれば、プロジェクトが失敗に終わったと判断されることもあるでしょう。

つまり、反対・抵抗勢力の存在というデメリットを克服することこそが、ペーパーレス推進を成功させるポイントです。

紙保存が義務付けられている書類の存在

紙文書での保存が義務付けられている書類の存在も、ペーパーレス化を阻害するデメリット。すべての組織に当てはまるわけではありませんが、もっとも影響を受けるのは不動産業界です。要件は緩和されつつあるものの、一部の契約書類はいまだに「書面契約・保存」が求められています。

こうしたケースでは、電子文書 / 紙文書それぞれ異なる管理を必要とするため、業務が混乱してしまう可能性もあります。これではペーパーレスを推進するインセンティブが働かないかもしれません。

しかし、宅建業法等の改正によって、不動産業に関連する書類の電子化・電子保存は進んでおり、今後もこの流れは加速するはず。デメリットとして捉えるのではなく、将来を見据えて、今できる電子化・ペーパーレス化に取り組むことが得策です。

ペーパーレス化の現状

それでは、印刷・情報用紙需要減が示すように、法人のペーパーレス化は普及・浸透しているのか。思うようにペーパーレスを推進できていない企業が少ないのは本当なのか。2021年に日本能率協会が調査した「ペーパーレス化の実施状況」をもとに、ペーパーレス化の現状を簡単に解説してみましょう。

下図は、「あなたの会社はどのような点が電子化(ペーパーレス)されましたか」という質問に対する回答をグラフ化したものです。

ペーパーレス化の現状

画像出典:一般社団法人日本能率協会

「契約書」「印鑑」「FAX」といった、取引先の意向や慣習が関係するもの以外、ペーパーレス化は意外に多くの業務・分野で進められています。「一部電子化された」を含めれば、法人の65%〜70%程度はペーパーレスに取り組んでいると考えられるでしょう。

一方、「調査までの1年間でペーパーレス化が進んでいるか」という質問には、半数以上が「あまり進んでいない」「まったく進んでいない」と回答しています。

ペーパーレス化の現状

画像出典:一般社団法人日本能率協会

これは、ペーパーレスに取り組んではいるが、思うように推進できていない企業が、少なくない割合で存在していることを示唆しています。

ペーパーレスが進むほど生産性向上を実感

業務電子化にあたって対応を求められる従業員は、ペーパーレスによって生産性向上を実感できているのか。これに関しては興味深い結果が得られています。下図は、「職場のペーパーレス化が進むと業務の生産性が向上すると思うか」という質問に対する回答をグラフ化したものです。

ペーパーレスが進むほど生産性向上を実感

画像出典:一般社団法人日本能率協会

「やや向上する」を含めると、ペーパーレス化によって生産性が向上すると回答したのは全体の約45%。「やや落ちる」「落ちる」の合計、約10%を大きく上回っています。

興味深いのは「自社のペーパーレス化が進んでいる人ほど、生産性向上を実感できている」ということ。自社のペーパーレス化が「とても進んでいる」人の約80%が「生産性が向上する」と回答しているのに対し、「まったく進んでいない」人では約22%にとどまっています。

ペーパーレスの不安は「ITスキル」「セキュリティ」

一方、調査対象者の約64%は、ペーパーレス化に対してなんらかの不安を感じているという結果も得られました。もっとも多かった不安は、42.9%を占める「ITスキル」、そして41.8%を占める「セキュリティ」です。

ペーパーレスの不安

画像出典:一般社団法人日本能率協会

ITスキルに不安を感じる人に加え、「業務が増える」「担当業務がなくなる」不安を感じる人が、それぞれ25.5%、3.6%存在することにも注目。ペーパーレス推進に対する反対・抵抗勢力となり得る人が、少なからず存在するのだと考えられます。

ペーパーレスに取り組む目的・意義

デメリット・障壁といえる「反対・抵抗勢力の存在」を克服し、ペーパーレスを推進していくためには「取り組みの目的・意義」を全社的に共有することが重要です。

たとえば、ペーパーレスの目的としては、メリットで解説した「業務効率化・生産性向上」「利便性」「多様な働き方推進」「CSR / SDGs」などが挙げられます。しかし、掲げた目的の達成に「意義」を感じられなければ、少なからず存在する反対・抵抗勢力の同意を得られないでしょう。

DX実現に向けた最初の一歩

どのような目的を設定するにしても、達成に向けた行動意義(価値)として掲げたいのが「ペーパーレスはDX実現に向けた最初の一歩」です。

たとえば、2021年に創設されたデジタル庁では「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を公表しており、その一環として行政サービスのオンライン化を掲げています。電子帳簿保存法 / e-文書法の要件緩和とあわせ、国の主導によるペーパーレス推進を手掛かりに、デジタル社会(DX)の実現に取り組んでいるのです。

これはビジネスであっても同じこと。来るべきDXに対応しなければ、組織の存続すら危ぶまれます。できることは今のうちから取り組むべきであり、その最初の一歩となり得るのが「ペーパーレス」だというわけです。

参考:デジタル庁

ペーパーレスを推進するポイント

ペーパーレスを推進するポイント

それでは、ペーパーレスの現状、取り組みの目的・意義の重要性を踏まえた上で、実際にペーパーレスを推進していく際のポイントを紹介していきましょう。

トップダウンでペーパーレスを推進

反対・抵抗勢力の存在というデメリットを克服し、ペーパーレスを推進するには「強力なリーダーシップ」が必要不可欠。この役割を担うのは経営層であり、経営層自らがトップダウンでペーパーレスを推進していく必要があります。

もちろん、指示・命令するだけではいけません。なぜペーパーレスを推進するのか、目的と意義を全社的に共有し、自らが模範を示すことが重要です。

ペーパーレスへの段階的な取り組み

自社内で利用されている紙文書の現状を調査し、優先したい業務・分野から段階的にペーパーレスへ取り組んでいきましょう

たとえば、経営層が率先して模範を示せる「会議のペーパーレス」や「報告書のペーパーレス」に取り組むなどが考えられます。業務や部署を絞り込んでペーパーレスに取り組むのも有効。ある業務・分野に集中することで電子化のコツを掴みやすくなるため、ITスキルに不安のある従業員の苦手意識を緩和できます。

成果・事例を共有

ペーパーレスへの取り組み結果を具体化して記録し、成果・事例を共有しましょう。日本能率協会の調査結果を見ても、ペーパーレスが進んでいる会社ほど生産性を実感できるからです。

たとえば、ペーパーレスによって短縮できた会議の時間、削減できた業務量、必要のなくなった作業など。ペーパーレスによって得られた成果を具体的な事例として共有できれば、積極的ではない従業員のモチベーションを高められます。

ペーパーレス推進に有効なツールの導入

もちろん、文書を電子化して保存・活用するためには、ペーパーレスの対象となる業務・分野に適したツール導入が必要です。

業務・分野

ツール

勤怠管理

勤怠管理システム

人事評価

人事・労務管理システム

国税関係帳簿・書類

電子帳簿保存法対応会計システム、文書管理システム

社内承認

ワークフローシステム

契約書

電子契約システム

営業用カタログ / パンフレット

タブレット

特に、国税関係書類や電子取引でペーパーレスを推進するには、文書へのタイムスタンプ付与を求められる場合があります。ペーパーレスを導入するにあたって、必要な要素を洗い出し、適切なツールを選定することが重要です。

関連記事:タイムスタンプとは?役割・仕組み・利用目的・対象となる書類・利用方法を解説!

ペーパーレス推進で注意すべきセキュリティ

ペーパーレス推進の不安要素として、41.8%を占める「セキュリティ」についても触れておきましょう。

ペーパーレスで活用されるツール、すべてにセキュリティリスクが存在するわけではありません。しかし、ネットワークを利用する、あるいはメールを併用する場合は「常にセキュリティリスク」があると考えましょう。その多くは「情報漏洩」です。

情報漏洩の原因には「内部要因」と「外部要因」があり、内部要因のほとんどは「人為的なミス」です。悪意ある第三者の攻撃に代表される外部要因を防止するには、システム側のセキュリティ対策が必要。内部要因の人為的ミスを防止するには、利用者のセキュリティ意識を高めていく必要があります。

関連記事:個人情報漏洩の防止対策|情報流出原因や被害事例、企業・従業員別の対策を解説!

ペーパーレスのメリット・デメリット・推進ポイントを紹介しました

ペーパーレスに取り組んでいるがなかなか定着しない。デメリットを克服してペーパーレスを推進させるにはどうしたらいいのか。そんな方に向け、ペーパーレスのメリット・デメリットから、取り組みの目的・意義・推進のポイントまでを網羅的に解説してきました。

本文内でも触れたように、ペーパーレスはDX実現に向けた最初の一歩です。それは、DX対応に向けた取り組みを続けることで、自然にペーパーレスを実現できることも意味します。DXに適合していくためにも、目的・意義を全社的に共有しながら、ペーパーレスを推進していくことが重要です。