複合機・プリンターの耐用年数は何年?減価償却の方法や勘定項目を解説!
複合機・プリンターには法定耐用年数が定められています。法定耐用年数は減価償却の方法にも関係してくることから、複合機・プリンター導入時に押さえておく必要があります。
- 新品の複合機・プリンターの法定耐用年数を知りたい
- 法定耐用年数を過ぎた複合機・プリンターは利用できる?
- 複合機・プリンターの減価償却方法が分からない
本記事では複合機・プリンターの法定耐用年数から、減価償却の方法、勘定科目を解説します。この記事を読めば、複合機・プリンターにおける減価償却方法が分かり、自社の状況にあわせて会計処理が行えるでしょう。
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複合機・プリンターの耐用年数
複合機・プリンターの耐用年数や、耐用年数を超えた場合について解説します。
法定耐用年数
複合機・プリンターの法定耐用年数は5年です。法定耐用年数とは、法律で定められている、その資産を使用できる期間のことを指します。
固定資産の中には複合機やプリンターのように、経年劣化や使用時の損耗で価値が減っていくものがあります。そのような資産は法定耐用年数を基に減価償却処理をします。
減価償却とは、固定資産の購入費用を法定耐用年数で分割して経費計上する、会計上の処理です。
複合機をリースする場合は、法定耐用年数の70〜120%が利用できる期間に該当するため、3.5年〜6年の範囲が契約可能な期間となります。
なおリースを利用する場合、リース費用は減価償却する必要はなく、リース代をそのまま経費として計上可能です。
法定耐用年数を超えるとどうなる?
法定耐用年数を超えても利用自体には特に問題となりません。法定耐用年数は資産を使用できる期間として設定されていますが、これは経費処理上の話であり、実際に使用する分には影響しないためです。
ただし、法定耐用年数を超えて使用することで、故障するリスクは高まるため注意しましょう。
中古の複合機の耐用年数
中古の複合機の場合は購入価格と使用期間で、以下の通り法定耐用年数が変わります。
- 法定耐用年数の全部を超過した資産:法定耐用年数の20%
- 法定耐用年数の一部を経過した資産:法定耐用年数-経過した年数+(経過年数×20%)
上記の計算の結果、1年未満の端数がある場合は端数を切り捨て、年数が2年に満たない場合は法定耐用年数を2年とします。
複合機における減価償却の方法
複合機の減価償却方法は以下の2つです。
それぞれの計算式とメリット、選び方について解説します。なお、リースやレンタルの場合には、減価償却する必要はなく通常の経費として計上可能です。
※減価償却資産の償却率は取得した時期によって変わるため、本記事では平成24年4月1日以後に取得したものとして計算しています。
参考:国税庁|定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)
定額法
定額法は償却費の額が基本的に毎年同額になる減価償却の方法で、計算しやすく資金計画も立てやすい点がメリットです。計算式は以下の通りです。
- 取得価額×定額法の償却率
※取得価額=購入代金+付随費用(運送費や設置費用・手数料など)
定額法の償却率は法定耐用年数で決まり、5年の場合は20%です。1〜4年目は購入金額の0.2%を経費として計上し、最後に残りの金額を1円だけ備忘価額として残して計上します。
備忘価額とは、会計上金額的価値がなくなった資産を事業で使っている場合に残す金額です。減価償却で価値を0円として処理すると、固定資産台帳から除外する必要があるため、このような状態をなくすための会計上の金額です。
例えば100万円の複合機を新品で購入し、定額法で計算した場合は以下の通り計算します。
1~4年目 |
100万円×0.2=20万円 |
5年目 |
100万円-80万円(1〜4年目で計上した金額)-1円=199,999円 |
定率法
一方の定率法は、購入した初年度に経費を多く計上し、徐々に金額を下げて計上する減価償却の方法です。計算方法は定額法と比較してやや複雑ですが、初年度に減価償却費を多めに設定したい場合におすすめです。計算式は以下の通りです。
- 未償却残高×定率法の償却率
定率法の償却率は法定耐用年数で変わりますが、5年の場合は40%です。ただし、償却保証額に満たなくなった年分以降は、以下の計算式に変わります。
- 改定取得価額×改定償却率
改訂償却率は法定耐用年数ごとに変わり、5年の場合は50%です。
なお償却保証額は以下の計算式で算出します。
- 資産の取得価額×当該資産の耐用年数に応じた保証率
当該資産の耐用年数に応じた保証率は、法定耐用年数ごとに設定される割合で、法定耐用年数が5年の場合、保証率は10.8%です。
例えば100万円のプリンターを新品で購入、定額法で計算した場合は、以下のように計算します。
償却保証額 |
100万円×0.108=108,000円 |
年数 |
減価償却費 |
未償却残高 |
1年目 |
100万円×0.4=40万円 |
100万円-40万円=60万円 |
2年目 |
60万円×0.4=24万円 |
60万円-24万円=36万円 |
3年目 |
36万円×0.4=144,000円 |
36万円-144,000円=216,000円 |
4年目 |
216,000円×0.4=86,400円 |
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4年目で、減価償却費86,400円が償却保証額である108,000円を下回ったため、4年目からは改訂保証率が適用されます。4年目以降の計算方法は以下の通りです。
年数 |
減価償却費 |
未償却残高 |
4年目 |
216,000円×0.5=108,000円 |
108,000円 |
5年目 |
216,000円×0.5-1円=107,999円 |
1円(備忘価額) |
定額法・定率法の選び方
法人の場合、原則として定率法が適用されます。ただし「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出した場合には、他の計上方法も選択可能です。個人事業主の場合は、どちらの方法も選択できます。
定額法は計算式が簡単で分かりやすいため、簡単に処理したい場合におすすめです。
定率法は初年度が最も減価償却費が高くなり、徐々に減少します。そのため、初年度にできるだけ減価償却費を高くしたい場合におすすめです。具体的には節税対策等で初年度の売り上げを小さくし、課税所得を小さくしたい場合が該当します。
なお、「減価償却資産の償却方法の届出書」は以下からダウンロードできます。
少額減価償却資産の特例も利用可能
少額減価償却資産の特例とは、中小企業などが取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した際、条件を満たしていれば取得価額相当額を損金として算入できる特例です。
2006年4月1日から2024年3月31日の期間に取得した資産が対象で、適用対象法人は以下いずれかに該当する法人です。
- 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人のうち、特定の条件に該当する法人
- 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人(受託法人を除く)
上記に当てはまる場合、30万円未満以下の複合機であれば一括で経費として計上できます。一括で経費計上することで、初年度の課税所得が小さくなり、初年度の税金負担が軽くなることがメリットです。
適用対象法人のより詳しい条件や特例詳細については、以下国税庁の案内をご覧ください。
国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
複合機・プリンターの勘定項目とは
複合機・プリンターの勘定科目は、購入価格によって変わります。
10万円未満 |
「消耗品費」 |
10万円以上 |
「備品」または「工具器具備品」 |
また、購入価格が10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産として処理できます。一括償却資産では、法定耐用年数に関係なく、取得価額の3分の1の費用を3年間にわたり費用計上が可能です。
購入価格が30万円以上の場合は、一括償却資産として扱えないため、償却年数に基づいた会計処理が必要となります。そのため「備品」の勘定科目で仕訳をし、上記の方法に基づいて会計処理を行いましょう。
複合機の耐用年数についてまとめました
本記事では複合機の法定耐用年数から、複合機の減価償却の方法について説明しました。複合機の法定耐用年数は新品の場合には5年で、中古の場合は経過した年数で法定耐用年数が変わります。
上記を参考に、自社の財務状況にあわせ、最適な方法で複合機の経費計上を行いましょう。