サーバー構築の費用相場・費用内訳|仮想クラウドサーバーの構築費用例も紹介!
ITシステムの活用は現代ビジネスに欠かせない重要な要素。その要となるのがサーバーです。しかし、サーバー構築の費用はいくらなのか?わからない企業担当者は多いはず。
そんな方に向け、オンプレミスで物理サーバーを構築する費用相場・費用内訳や、仮想クラウドサーバーの構築費用例を紹介していきます。
サーバー構築の費用相場(物理オンプレミスサーバー)
オンプレミス(On-Premises)とは、ハードウェア / ソフトウェアで構成されたシステムを自社管理する構内で運用すること。物理サーバーとは、物理的なハードウェアを使って構築されたサーバーのこと。つまり、物理オンプレミスサーバーとは、自社管理する構内に設置される、自社所有のハードウェア/ ソフトウェアで構築されたサーバーのことです。
また、構築された物理サーバーを設置する「自社管理の構内」は、オフィスや自社データセンターのほか、ハウジングサービスが利用される場合も。ハウジングサービスとは、物理サーバーを設置するスペースを貸し出すデータセンターサービスのことです。まずは、物理オンプレミスサーバーを構築する場合の大まかな費用相場を紹介していきましょう。
サーバー構築の費用項目 |
目安となる費用相場 |
サーバーPC本体 |
10万円〜150万円以上 |
サーバーPC周辺機器 |
7万円〜40万円以上 |
サーバー設計 / 構築 |
3万円〜30万円以上 |
ハウジングサービス |
月額6万円〜 |
このほか、ゼロからシステム構築する場合は、サーバーに接続されるネットワークの設計 / 構築費用、および利用人数分のクライアントPC調達費用が必要。また、サーバーの運用 / 保守をアウトソーシングする場合は月額費用が必要です。
サーバー構築の費用内訳(物理オンプレミスサーバー)
それでは、大まかな目安となるサーバー構築費用を把握できたところで、費用項目の内訳をもう少し詳しく解説していきましょう。
サーバーPC本体の費用
OS / アプリのインストールに必要なサーバーPC本体費用は、用途 / スペックによってさまざま。CPU / メモリ / ストレージなどの構成パーツは一般的なPCと同じですが、24時間365日稼働が前提となるサーバーPCは、耐久性が重視されるため高価です。タワー型 / ラックマウント型があり、大容量データ保存用のストレージサーバを組み合わせる場合もあります。
主な用途 |
目安の費用相場 |
|
小規模向けサーバーPC |
オフィス内利用のファイルサーバーなど |
10万円〜 |
中規模向けサーバーPC |
オフィス内利用の業務アプリ用サーバーなど |
35万円〜 |
大規模向けサーバーPC |
複数拠点で利用する業務アプリ向けサーバーなど |
150万円〜 |
サーバーPC周辺機器の費用
24時間365日稼働が前提のサーバーでは、UPS(無停電電源)の利用が必須。サーバーシステム設定用のモニタ / キーボード / マウスといった周辺機器も必要です。また、ラック型サーバーPCをオフィスに設置する場合、PCから発生する熱 / 騒音の影響を避けるため、静音ラックを用意 / 設置することもあります。
目安となる費用相場 |
|
UPS |
5万円〜12万円 |
モニタ / キーボード / マウス |
2万円〜 |
静音ラック |
25万円〜 |
サーバー設計 / 構築費用
利用できる状態にサーバーを構築するには、OS / ミドルウェア / アプリケーションなどをPCに組み込まなければなりません。
これをアウトソーシングする場合、サーバーの設計 / 構築費用が必要。どのようなサーバーを構築したいかによって費用は異なりますが、大まかな目安は以下の通りです。
構築するサーバーの種類 |
目安となる費用相場 |
ファイルサーバー |
3万円〜7万円 |
Webサーバー |
7万円〜10万円 |
業務アプリのシステムサーバー |
25万円〜30万円以上 |
ハウジングサービスの費用
データセンターの一部スペースを借りる形になるハウジングサービスを利用するには、月額レンタル料金が必要です。内訳はスペースのレンタル料、およびネットワーク回線利用料。費用相場としては、4Uラックスペースのレンタル費用が月額4万円程度、100Mbpsの回線利用料が月額2万円程度です。
ハウジングサービスによっては、さらに高速なネットワーク回線を選べる場合も。サーバー用電源 / ハードウェア保守などは、レンタル料金に含まれることが一般的です。
ネットワーク設計 / 構築費用・クライアントPCの費用
なにもないオフィスにゼロからクライアントサーバシステムを構築するなら、ネットワーク(社内LAN)および端末(PC)も必要です。構築するネットワーク規模、クライアント人数によって費用は変動しますが、1フロア / 25クライアントの費用目安を紹介しておきましょう。
目安となる費用相場 |
|
ネットワーク設計費用 |
10万円前後 |
ネットワーク構築費用 (ルーター / ハブ / LANケーブルなどを含む) |
20万円前後 |
クライアントPC |
7万円〜15万円程度 / 1台 |
サーバー運用・保守費用
自社にサーバー運用・保守を任せられる人材がいない場合、運用・保守のアウトソーシング費用がかかります。依頼内容 / メニューにもよりますが、サーバー構築費用の約10〜15%程度が運用・保守費用の目安です。
たとえば、30万円で業務アプリのシステムサーバーを構築した場合、月額3万円〜4万円程度が運用・保守費用の相場だと考えておけばいいでしょう。
サーバー構築費用が変動する要因(物理オンプレミスサーバー)
ネットワーク / PC端末など、必要なものによっても費用総額は異なりますが、サーバー本体 / 構築費用だけに注目しても費用の変動が非常に大きいことを理解できたはず。
その要因は「システム規模 / ハードウェアのスペック」「構築するサーバーの種類」です。もう少し詳しく解説してみましょう。
システム規模 / ハードウェアのスペック
サーバーPC本体に関しては、システム規模が大きくなるほどハイスペックなハードウェアが必要になるため、サーバー構築費用は高額になる傾向にあります。
たとえば、常時接続するクライアント数を例にすれば、5名より100名の方がより高スペックなCPU / メモリ / ストレージが必要です。
高スペックなパーツを安定的に常時稼働させるため、放熱 / 排熱に配慮した「高価な」PC筐体も必要。エンタープライズ向けサーバーPCが高価なのはこのためです。
構築するサーバーの種類
どのような種類のサーバーを構築するかによっても費用は大きく変動します。ただし、これは単純に「ファイルサーバーだから安い」「システムサーバーだから高い」というものでもありません。
たとえば、同じファイルサーバーでも、映像編集などで利用されるストレージサーバーは、500万円を超える場合も少なくありません。大容量の映像データを取り扱うには、高速かつ大容量のRAIDストレージ、10G / bps級の高速なネットワークを必要とするからです。
近年主流の仮想クラウドサーバーとは
ここまでは、物理オンプレミスサーバーの構築費用を紹介してきましたが、サーバー構築の主流は「仮想クラウドサーバー」へと移行しつつあります。
仮想クラウドサーバーとは、AWS / GCP / Azureなどのパブリッククラウドに代表されるクラウドサービスです。
物理サーバー / 仮想サーバーの違い
物理サーバーは、自社所有のハードウェアリソースを利用して構築するサーバーであることはすでに解説しました。これに対する仮想サーバーとは、1つのサーバーPCで複数のOSが動作する仕組みを構築し、複数の利用者で共有すること。物理的なハードウェアを所有するのではなく、月額料金を支払って利用することが仮想サーバーの特徴です。
物理サーバー |
仮想サーバー |
|
導入費用 |
ハードウェアを含めた 初期費用が高額 |
月額費用のため導入費用を 抑えられる |
運用・保守 |
ハードウェア / ソフトウェアとも 自社の責任で実施 |
ハードウェアの管理・保守を ベンダーに一任できる |
拡張性 |
ハードウェアの追加購入が必要 |
必要に応じて CPU / メモリ / ストレージ / ネットワークを 増減可能 |
物理サーバーのメリット・デメリット
仮想サーバーとの違いである「初期費用が高額」「自社の責任で運用・保守」「拡張には物理的な追加購入が必要」という特徴は、物理サーバーのデメリットだといえます。
では、主流とはいえない物理サーバーを導入するのはなぜか?主に以下のようなメリットが得られるからです。
- 目的に応じてハードウェア / ソフトウェアを自由に選べる
- カスタマイズの自由度が高いため既存システムと連携しやすい
- オンプレミスで運用するためセキュリティを確保しやすい
仮想サーバーのメリット・デメリット
物理サーバーとの違いである「導入費用を抑えられる」「運用・保守をベンダーに一任できる」「リソースのスケーリングに対応」という特徴は、仮想サーバーのメリットです。
もちろん、仮想サーバーの利用はメリットばかりではありません。主なデメリットとしては、以下が挙げられます。
- カスタマイズの自由度はベンダーが提供するサービス範囲に限られる
- 利用方法 / 期間によっては費用総額が物理サーバーを超える場合がある
- ネットワーク環境でパフォーマンスが左右される場合がある
ただし、ベンダーが新たなサービスを次々とリリースしているため、仮想クラウドサーバーの自由度は飛躍的に高まっています。運用・保守やセキュリティ対策の負担を考えれば、クラウドの方が高額だとは一概にいえません。
このように、ネガティブな要素が気にならない状況になったことで、利便性に優れるクラウドの魅力が高まってきたのだと考えられます。
AWSの仮想サーバー構築費用例
それでは、仮想クラウドサーバーの構築費用は、どのくらいを目安に考えておけばいいのか?支払いは月額となるものの、仮想サーバーは「使った分だけ支払う」ことが基本。組み合わせるサービスによっても費用は大きく異なります。参考として、AWSで公開されている、用途ごとの仮想サーバー構築費用例を紹介しておきましょう。
用途 |
概要 |
費用例 |
シンプルな Webサイト構築 |
Lightsailを利用した スケーリングに対応 |
月額4ドル |
動的な Webアプリ構築 |
EC2 / RDSを利用した スケーリングに対応 |
月額760ドル |
Windows ファイルサーバー構築 |
2TB HDD(容量重視)/ 2TB SSD(通信速度重視) |
月額482ドル / 月額615ドル |
Windows Server 社内業務アプリ構築 |
AWSと自社オフィスをVPNで接続 |
月額2,008ドル |
ホスティングサービス(レンタルサーバー)とは?
仮想クラウドサーバーと似たサービスに、レンタルサーバーとも呼ばれる「ホスティングサービス」があります。仮想クラウドサーバーのような自由度はありませんが、安価に利用できるため、サーバー構築時の選択肢として検討する余地があるでしょう。ニーズに応じて「共有サーバー」「VPS」「専用サーバー」を選べる場合がほとんどです。
共有サーバー
共有サーバーとは、データセンターの物理サーバーを複数ユーザーで共有 / レンタルするホスティングサービスのこと。OS / ミドルウェアがあらかじめ用意されているため、アプリケーションをインストールすればすぐに利用できます。
月額1,000円以内で利用できるサービスも多く、WordPressで構築した動的Webサイト向けのサーバーとして幅広く利用されています。
VPS(Virtual Private Server)
VPSとは、複数ユーザーが共有 / レンタルできるよう、サーバーOS上に複数の仮想サーバーを構築したホスティングサービスのこと。仮想クラウドサーバーのPaaSに該当し、OS / ミドルウェア / アプリケーションを自由に選んでシステム構築できます。
CPU / メモリ / ストレージ / ネットワークのスケーリングに対応するサービスもあり、数千円程度からと月額費用も安価。中規模クラスのECサイト構築などに利用されています。
専用サーバー
専用サーバーとは、文字通り、データセンター内の物理サーバーを自社専用にレンタルできるホスティングサービスのこと。ハウジングサービスが「設置スペースをレンタルする」のに対し、「設置スペースも含めたハードウェアをレンタルする」とイメージすればわかりやすいでしょう。
レンタルするサーバースペックやサービスにもよりますが、月額費用は約40,000〜50,000円程度から。もっとも自由度の高いホスティングサービスではありますが、ネットワーク以外の運用・保守・セキュリティ対策は、自社の責任で実施しなければなりません。
サーバーを構築する際のポイント
物理オンプレミスサーバー構築、仮想クラウドサーバー構築の費用とともに、選択肢となりうるホスティングサーバーも紹介してきました。しかし、自社に最適なサーバーを構築するにはどれを選べばいいのか?迷っている方もいるはず。そんな方に向け、サーバー構築する際のヒントとなるポイントを解説していきましょう。
サーバー構築の目的・用途
まず明確にすべきことは、サーバー構築の目的・用途です。目的・用途が明確ではないうちから、サーバー構築方法を検討すべきではありません。なぜなら、目的・用途に応じて最適なサーバー構築方法は異なるからです。
逆に、サーバー構築の目的・用途が明確であれば、自ずと適した構築方法が見えてくるはず。たとえば、大容量の動画データを活用するストレージサーバなら、ネットワークの安定したオンプレミスがベスト。中規模Webサービスのサーバ構築なら、VPSが選択肢の筆頭になるでしょう。
拡張性 / 可用性 / セキュリティ
オンプレミス / クラウドどちらにもメリットがある基幹システムのように、複数の選択肢で迷ってしまう場合、拡張性 / 可用性 / セキュリティで比較してみましょう。
たとえば、サーバ本体の拡張性で考えた場合、物理的なハードウェアを追加する必要のあるオンプレミスに対し、ハードウェアリソースをスケールできるクラウドが有利。ほぼ100%を誇る、クラウド同等の可用性(障害なく稼働すること)をオンプレミスで実現するには「バックアップサーバー」が必要です。
一方、不安が少なくなったとはいえ、セキュリティ面で考えれば、クラウドよりも外部ネットワークから遮断できるオンプレミスが有利。システム構築の面でも、ハードウェア / ソフトウェアを自由に選べるオンプレミスが有利です。
運用・保守体制
サーバー構築時に忘れてはならないことが「運用・保守体制」です。保守の一部をベンダーに任せられるクラウド / ホスティングと異なり、オンプレミスの運用・保守は自社の責任で実施するという違いがあるからです。
運用・保守のリソース不足をアウトソーシングで補うことも可能ですが、オンプレミスのコストはもっとも高額。構築するサーバーの種類によっては、コストが見合わないという場合も考えられます。
サーバー構築の費用相場・費用内訳を紹介しました
「サーバー構築の費用はいくらかかるのか?目安となる費用を知りたい」そんな企業担当者に向け、オンプレミスで物理サーバーを構築する費用相場・費用内訳や、仮想クラウドサーバーの構築費用例を紹介してきました。
ひとことにサーバー構築といっても、種類・規模・構築方法は実にさまざま。当然、さまざまな要因の組み合わせによって、サーバー構築費用は大きく変動します。ただし、費用のみに注目してパフォーマンスを犠牲にしてはいけません。大事なのはサーバー構築する目的と用途、そして目的・用途に適した構築方法を選定することです。