電子帳簿保存法のスキャナ保存制度|対象書類・要件・導入しやすくなった法改正のポイントを解説!

電子帳簿保存法のスキャナ保存制度|対象書類・要件・導入しやすくなった法改正のポイントを解説!

国税関係書類のスキャナ保存制度が導入しやすくなったと聞くがなぜか。そもそも電子帳簿保存法とはなにか。紙で文書を管理している企業担当者の方なら気になっているはず。

そんな方に向け、スキャナ保存の対象書類から要件、導入メリット、必要なツールまで、導入しやすくなった電子帳簿保存法改正のポイントを紹介します。

目次
  1. 1. 電子帳簿保存法のスキャナ保存制度とは
    1. 1-1. 電子帳簿保存法の区分は3つ
    2. 1-2. 電子帳簿保存法の電子データ保存要件
  2. 2. スキャナ保存の対象となる書類
    1. 2-1. 重要書類 / 一般書類とは
    2. 2-2. スキャナ保存の対象書類一覧
  3. 3. スキャナ保存の要件
    1. 3-1. タイムスタンプとは
    2. 3-2. スマートフォンでもOK?スキャナ要件
  4. 4. 改正電子帳簿保存法で導入しやすくなったスキャナ保存
    1. 4-1. スキャナ保存の導入メリット
    2. 4-2. 電子取引の紙原本保存は不可に
  5. 5. スキャナ保存に必要なツール / スキャナは?
    1. 5-1. 電子帳簿保存法対応システム
    2. 5-2. 電子帳簿保存法対応スキャナ
  6. 6. 電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を紹介しました

電子帳簿保存法のスキャナ保存制度とは

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿・書類などを、電子データで保存する要件等を定めた法律のこと。このうち、取引先から受け取った国税関係書類などを、スキャン画像で保存することを認めた制度が「スキャナ保存制度」です。紙での保存が義務付けられていた法定保存文書の電子化を容認し、利便性 / ペーパーレス推進を目指した法律だといえます。

1998年7月1日に施行された電子帳簿保存法は、ビジネスのデジタル化を受けて法改正が複数回実施されています。いずれの法改正も要件を緩和するものであり、直近の改正電子帳簿保存法は、2022年1月1日に施行されました。

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ペーパーレスのメリット・デメリットについては、「ペーパーレスとは|メリット・デメリット・取り組みの意義・推進のポイントを解説!」をあわせてご覧ください。

電子帳簿保存法の区分は3つ

電子帳簿保存法の区分は3つ

画像出典:国税庁 広報資料

電子帳簿保存法は、文書 / 取引の特徴に応じた3つに区分されており、スキャナ保存以外に「電子帳簿等保存」「電子取引」区分が設けられています。区分それぞれで対象となる文書・書類・情報は異なりますが、電子帳簿等保存、電子取引に関しては、電子データを電子データのまま保存することが原則です。

電子帳簿保存法の電子データ保存要件

区分ごとに文書・書類・情報が異なるため、電子データの保存要件も区分ごとに若干異なります。ただし、電子帳簿保存法の要件は「真実性の確保」「可視性の確保」が基本。スキャナ保存を含む電子帳簿保存法すべての区分で、共通した電子データ保存要件もあります。具体的には以下の通り。

 

保存要件

国税関係

帳簿

国税関係書類

 / 電子取引

真実性の確保

記録の訂正・削除の事実を確認できること

-

通常の業務処理期間経過後の入力履歴を

確認できること

-

電子化した帳簿と関連する

他の帳簿間の関連性を確認できること

-

マニュアル等を含むシステム関連書類を

備え付けること

可視性の確保

電子計算機・プログラム・ディスプレイ・

プリンタ・マニュアルを備え付け、

記録を明瞭かつ整然と出力できること

検索要件

取引年月日、取引金額、

取引先によって検索できること

取引年月日、

または

その他の日付で

検索できること

日付または金額の範囲指定で検索できること

取引年月日、

または

その他の日付で

検索できること

2つ以上の任意の組み合わせ条件で

検索できること

-

参考:国税庁 電子帳簿保存時の要件

スキャナ保存の対象となる書類

電子帳簿保存法の基本概要を理解できたところで、どのような国税関係書類がスキャナ保存の対象になるのかを紹介していきましょう。

重要書類 / 一般書類とは

スキャナ保存の対象となる書類は、帳簿、電子取引情報以外の「国税関係書類すべて」です。これには、取引先から受け取った国税関係書類以外に、自社が作成・発行した国税関係書類「写し / 控え」も含まれます

ただし、国税関係書類は重要度に応じた3種類に区分されており、それぞれでスキャナ保存の要件が若干異なります。重要度に応じた国税関係書類の分類は以下の通り。

 

重要書類

(重要度・高)

重要書類

(重要度・中)

一般書類

(重要度・低)

重要度の解説

資金・物の流れに直結・

連動する書類のうち

特に重要な書類

資金・物の流れに

直結・連動する書類

資金・物の流れに

直結・連動しない書類

書類の性格

一連の取引過程における開始点・

終了点の取引内容を

明らかにする書類

中間過程で作成される書類の

真実性を補完する書類

一連の取引過程で

作成される書類

所得金額の計算と

直結・連動する書類

資金・物の流れに

直結・連動しない書類

参考:国税庁 電子帳簿保存法一問一答

スキャナ保存の対象書類一覧

重要書類 / 一般書類の違いを踏まえた上で、スキャナ保存の対象となる具体的な国税関係書類を一覧で紹介しておきましょう。

重要書類

(重要度・高)

重要書類

(重要度・中)

一般書類

(重要度・低)

契約書

領収書

写し / 控えも含む

預り証

借用証書

預金通帳

小切手

約束手形

有価証券受渡計算書

社債申込書

契約の申込書

(定型的約款なし)

請求書

納品書

送り状

輸出証明書

写し / 控えも含む

検収書

入庫報告書

貨物受領書

見積書

注文書

契約の申込書

(提携的約款あり)

写し / 控えも含む

参考:国税庁 電子帳簿保存法一問一答

スキャナ保存の要件

スキャナ保存の対象となる国税関係書類は、重要度に応じて「重要書類(高)」「重要書類(中)」「一般書類(低)」の3種類に区分できることを解説しました。これらの書類をスキャナ保存する際は、「重要書類(高 / 中)」および「一般書類(低)」で定められた要件にしたがって保存する必要があります。それぞれのスキャナ保存要件は以下の通り。

 

スキャナ保存要件

重要書類(高 / 中)

一般書類(低)

真実性の確保

入力期間の制限

適時入力

タイムスタンプの付与

解像度 / 階調情報の保存

大きさ情報の保存

(A4以下は不要)

-

入力者情報の確認

可視性の確保

スキャン文書と帳簿の

相互関係保持

タイムスタンプとは

スキャナ保存要件に含まれるタイムスタンプとはなにか?疑問に感じる方がいるかもしれません。タイムスタンプとは、電子文書がある時刻に存在していたこと(存在時刻の証明)、それ以降、電子文書が改ざんされていないこと(非改ざん証明)を証明する技術のこと。

電子帳簿保存法にもとづいてスキャナ保存する場合、原則としてスキャン画像にタイムスタンプを付与する必要があります。国税関係書類の「真実性の確保」を担保するには、タイムスタンプによる「存在時刻の証明」「非改ざん証明」が必要というわけです。

また、重要書類(高)に分類される契約書の場合、タイムスタンプだけでは文書の完全性を証明できません。契約書の完全性を証明するには、本人性を証明するための「電子署名」を追加する必要があります。

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タイムスタンプについては、「タイムスタンプとは?役割・仕組み・利用目的・対象となる書類・利用方法を解説!」をあわせてご覧ください。

スマートフォンでもOK?スキャナ要件

電子帳簿保存法では、「記録を明瞭に出力できること」という可視性の確保を満たすため、スキャナ保存時のスキャナ要件も定められています。具体的には以下の通り。

スキャナ要件

重要書類(高 / 中)

一般書類(低)

25.4mmあたり200ドット以上の解像度

赤 / 緑 / 青それぞれ256階調以上

(約1660万色)

グレースケールでの

保存も可

また、2016年の改正電帳簿保存法で「原稿台と一体となったもの」という要件が廃止されました。このため、2016年以降は、要件を満たすスマートフォンカメラで撮影した画像もスキャナ保存できます

改正電子帳簿保存法で導入しやすくなったスキャナ保存

改正のたびに要件緩和されてきた電子帳簿保存法ですが、2022年施行の改正電子帳簿保存法の特徴は「スキャナ保存要件の大幅緩和」です。さまざまな事情でスキャナ保存を見送ってきた事業者でも、導入しやすいように要件緩和されています。主な改正内容は以下の通り。

 

従来のスキャナ保存要件

2022年以降の

スキャナ保存要件

申請承認

スキャナ保存を開始する

3か月以上前に税務署への申請が必要

申請承認廃止

税務署への申請は不要

タイムスタンプ

スキャナ保存するすべての書類に付与

条件を満たせばタイムスタンプ不要

入力期間

受領者が入力する場合は自署して3営業日以内

経理部門で入力する場合は

最大2か月と7営業日以内

最大2か月と7営業日以内

受領者の自署も不要

適正事務処理要件

受領者以外の相互牽制

定期的な検査

再発防止耐性

廃止

特に、申請承認の廃止、適正事務処理要件の廃止は、スキャナ保存制度導入への追い風となるでしょう。タイムスタンプ要件が大幅に緩和されたのも改正電子帳簿保存法のトピック。そもそも、作成 / 変更履歴の残るシステム、スキャナ保存以降に内容を変更できないシステムを利用していれば、タイムスタンプを付与する必要もありません。

ただし、要件が緩和された一方で、罰則が強化されたのも覚えておきたいポイントです。これまでも「改ざんなどの不正で納税額を偽った場合の重加算税」という罰則がありましたが、改正後は「改ざんに対する重加算税には10%が加算される」へ変更されました。

スキャナ保存の導入メリット

それでは、ハードルの下がったスキャナ保存制度を導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。大きくは以下の3点です。

  • 印刷 / 保管コストの削減、保管スペースの節約
  • 容易な管理、優れた検索性による業務効率化、生産性向上
  • 現物が不要になるため、テレワークを含む多様な働き方を推進可能

また、すでに国税関係帳簿を電子保存している企業であれば、スキャナ保存制度を併用し、国税関係書類すべてを電子データに統一できます。さまざまな書類をシステムで一元管理することにより、業務効率 / 生産性のさらなる向上が期待できるでしょう。

電子取引の紙原本保存は不可に

一方、国税関係帳簿・書類・電子取引、すべてを紙文書で管理していた企業は、改正電子帳簿保存法によって電子保存に一本化する必要があるかもしれません。

なぜなら、改正電子帳簿保存法によって「電子取引の紙原本保存は不可」になったからです。これまで電子取引のデータを紙文書に印刷して保存していた企業は、電子データのままで保存しなければなりません。

紙文書 / 電子データそれぞれを個別管理するには時間も手間もかかります。電子取引の電子保存が義務化されるなら、電子保存に一本化したほうが得策。2023年12月31日までの猶予期間は設けられていますが、早めの行動がおすすめです。

スキャナ保存に必要なツール / スキャナは?

改正電子帳簿保存法によってスキャナ保存制度を導入すべきなのは理解できた。しかし、どのようなツールを使えばいいのかわからない。どのようなスキャナが必要なのかわからない。そんな方に向け、ツール / スキャナの選び方を簡単に解説しておきましょう。

電子帳簿保存法対応システム

スキャナ保存制度を導入するには、要件を満たす「電子帳簿保存法対応システム」を選ぶのが早道です。

たとえば、帳簿を含めた国税関係書類を紙文書で保存・管理している。会計システムを利用しているが、電子帳簿保存法に対応していないという企業・事業者であれば、電子帳簿保存法に対応した会計システムがおすすめ。スキャナ要件を満たすスキャナ / スマートフォンがあれば、ほかのツールを追加する必要もありません。

電子帳簿保存法対応の会計システムを利用しているが、スキャナ保存する国税関係書類とは分けて管理したい。そんな企業・事業者であれば、電子帳簿保存法対応の文書管理システムがおすすめ。フォルダに文書をドロップするだけで、タイムスタンプを付与できるツールもあるため、国税関係書類以外の文書にタイムスタンプを付与したい場合も便利です。

日本文書情報マネジメント協会では、スキャナ保存要件に対応するシステム各種を一覧で紹介しているため、ツール選定の参考に利用できるでしょう。

参考:日本文書情報マネジメント協会

Money Forwardクラウド会計Plus

Money Forwardクラウド会計Plus

画像出典:Money Forwardクラウド会計Plus

Money Forwardクラウド会計Plusは、電子帳簿保存法に完全対応したクラウド型会計システムです。銀行・クレジットカード連携、仕訳自動作成、決算書作成、仕訳承認、権限管理・仕訳ログ管理などの機能を持ち、上場に向けて内部統制を強化したい企業に最適。頻繁に改正される法令への対応もクラウドだから迅速。インボイス制度にも対応しています。

MyQuick

MyQuick

画像出典:MyQuick

MyQuickは、ニーズに応じてクラウド / オンプレミスを選べる、電子帳簿保存法スキャナ保存制度対応の文書管理システムです。タイムスタンプに対応する「プレミアムプラン」なら、OCR機能も利用可能。読み取ったデータをもとにしたタグ付けで優れた検索性を発揮します。

電子帳簿保存法対応スキャナ

一般的な業務用複合機であれば、スキャナ要件を満たしています。このため、すでに複合機を導入している企業・事業者であれば、別途スキャナを用意する必要はありません。スマートフォンのカメラで事足りる場合も同様です。

ただし、複合機を導入していない、スマートフォンは使えるがスキャン保存したい文書が多いといった場合は、コンパクトなフラットベッドスキャナがおすすめ。どのモデルを選んでも問題はありませんが、会計ソフトなどと連携できる製品を選ぶと便利に使えるでしょう。

リコーScanSnapシリーズ

リコーScanSnapシリーズ

画像出典:リコー

リコーScanSnapシリーズは、電子帳簿保存法スキャナ制度に対応する「e-文書モード」を搭載したフラットベッドスキャナシリーズです。コンパクトな筐体に業務用スキャナで培った技術を凝縮。クラウド経由でMFクラウド会計、弥生会計などと連携できるほか、スマートフォン向けアプリを統合可能。スキャン画像を一元管理できます。

電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を紹介しました

国税関係書類のスキャナ保存制度が導入しやすくなったと聞くがなぜか。そもそも電子帳簿保存法とはなにか。知りたい方に向け、スキャナ保存の対象書類から要件、導入メリット、必要なツールまで、導入しやすくなった電子帳簿保存法改正のポイントを紹介してきました。

要件緩和によってスキャナ保存制度を導入しやすくなったことは事実ですが、同時に、電子取引の電子保存が義務付けられたことに注意が必要。もはや、電子帳簿保存法スキャナ制度は、電子取引のあるすべての企業にとって必須といえるでしょう。導入自体は容易になったため、対応へ向けて早めに行動を起こすことがおすすめです。